はらり、ひとひら。
ふと、思い出す。
おじいちゃんの妻─、つまり私のおばあちゃんは凄く綺麗な人だったらしい。
けれど若くに亡くなったそう。
おじいちゃんは、すごく優しい人だったけれど、おばあちゃんの話をあまり聞かせてくれなかった。
きっと、思い出すのが辛いからだと思う。
そうだ、帰ったらおじいちゃん
に貰った卒業祝いを開けてみよう。
まだ開けていないんだった。
「じゃあ、また来ます」
墓石に刻まれた“椎名家”という文字に会釈した。