はらり、ひとひら。
暗い。真っ暗だ。どこを見回しても、目を開けても閉じても真っ暗な闇。
『くすくす…』
『人とは弱き生き物よ』
嘲るような声には覚えがあった。恐らく妖だ。暗闇にもようやく目が慣れてきた。目を凝らすとそれは何かを抱え、啜るように血を吸っていた。
『いやああ!助けて杏子!』
「っ!??」
がばっ、と勢い良く布団から跳ね上がる。不規則な息を整え、ようやく先程の光景が夢だと気づく。
「良かったあ…」
長い安堵のため息を漏らす。
額に浮いた汗を手の甲で擦り、もう一度布団に背を沈ませる。眠っていたはずなのにひどく疲れてしまった。
一度目を閉じるが、また同じような夢を見たら…と思うと気が引けたのでそのまま上着を着てリビングへ降りた。