はらり、ひとひら。
「東雲と言ったか。お前の友人」
こくりと頷いたのを視線の端の方で捉える。
やはりそうか。
「あの邪鬼は、かつて東雲だったもの」
「…!」
ゆっくりと顔を上げ天音は再び「そうか」と首を振る。
「夥しい程の邪気を放っていた。妖を食い漁り、邪鬼になってから時が経っているようだった。おそらくあれは人の手によるものではない。己の力の暴走によるもの」
妖が、邪鬼に転じること自体は、珍しいことではない。
妖の小さな心の灯火が消え、邪な気がその心を喰い潰すと妖は邪鬼に変わってしまう。
心も、自我も持たない。知性の飛んだ何でもない─ただ、哀しいものへと転んでしまう。