はらり、ひとひら。


「助かる術は、なかったのか」


天音はわからない、と首を振った。


「あいつが邪鬼になったのは私の所為だ。それでも、どうしてもあいつの命を繋ぎとめたかった。…風の噂で、この森の何処かにその病を治す薬草があると聞き、探しに行かずには居られなかった」


誰が流したかもわからない勝手な噂。信じたこいつは愚かと言うほかないが、友の為、愛する者の為なら…


「傍にいた方があいつにとって良かったと気づいたのは、つい最近になってからだ。私は東雲の心の声に気づけなかった。置いて行ってしまった。一人にしてしまった─」




寄り添うだけで良かったのに。


伸びた声を馬鹿馬鹿しく思えないのはなぜだろう。

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