はらり、ひとひら。


気持ち悪い。この感覚は少し、懐かしかった。矢野先生が何者かに操られ、邪鬼を大量生産して森を荒らしたあの一連の事件以来だ。



がんがんと頭の中で、何かが響いてる。不気味な笑い声みたいなのが、さっきからずっと。


「しっかりしろ。気を強く持たないとやられるぞ」


師匠の言葉が、響いた。…私が呑まれてどうする。自分を叱るように強く頷く。



「気配が近いぞ。気をつけろ」

「うん」


慎重に、歩みを進めていく私たち。ぱきんと折れる枝の音さえ耳障りだ。なるべく足音を立てないように注意をはらう。


妖の心の灯火が消え、邪気に心を喰い潰されたら終わり─か。


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