はらり、ひとひら。
私は結局東雲から離れることはしなかった。なぜと問う彼女に看取るくらいさせてくれ、というと東雲は笑った。
本格的に冬に近づくにつれ、彼女の病も進行していった。少しでも寒さを和らげるために小さな堂に、彼女を入れた。
衰弱していく彼女。目の色は濁り、肌は焼け爛れ見るに耐えない。それでも、目を逸らさず毎日包帯を取り換えた。
そんな時だ。痛み止めの丸薬を貰いに薬師のもとへ訪ねた際、偶然居合わせた妖に聞いた。東雲が患っている病気に効果があるという薬草を。
「聞いてくれ、東雲。病を治す薬草がこの森のはずれにあるらしい。とても珍しいもので見つかるかわからないが、暫く探しに行ってみる。絶対に死なせやしない…!」
そのとき閉じられた瞼が、ぴくりと動いた。必死に私の姿を探しているようだった。
「あま…ね」
「必ず帰って来ると約束する。もうしばらくの辛抱だ」
それだけ言い残すと、私は堂から飛び出した。薄く積もった雪の下、どこかに埋まる薬を信じて。
東雲の私を呼ぶ声が聞えた気がしたが、私は振り向かなかった。