はらり、ひとひら。
「わあっ…すごい、見て師匠!」
色づいた紅色と黄色。青い空と相まって今日はいっそう綺麗だ。
─そう、今は秋真っ只中。というわけで学校がお休みの今日は、お弁当を拵え森へ紅葉狩りへやって来た。
「まったく紅葉如きで何をはしゃいでいる。ガキか」
「がっ…あのねえ…はあ、もう。自然を愛でるのはいいことでしょ」
ばばくさいと言われても、風景だけは何度見ても心躍ってしまう。
この町は確かに田舎であるが、四方八方森に囲まれていることも助長して、紅葉はもちろん春の桜も絶景だ。
もう少しこれを売りにして観光客でも呼び寄せたらいいのに…なんて思っていると師匠が呆れたようにため息をついた。
「帰るぞ」
「ええ!?ダメだよ、今日は早起きしてお弁当まで作ったんだから。もう少し奥まで行ってみよう」
「迷うぞ」
そのために師匠連れて来たんでしょーが。構わず更に奥のほうへ行こうと足を踏み出した、正にそのときだった。
「人間」