はらり、ひとひら。
「見える人間と会うのは久しぶりだ。話をしないか」
じっと、彼の薄茶色の瞳を見つめ頷いた。見た感じほかの人間はいないし、話し相手がほしかったし丁度いい。
「見ない顔だな。ここらに棲んでいるのか」
と師匠が訊くと、彼は頷く。私はなんだか不思議な気持ちで訊ねた。
「貴方、名前は?」
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「杏子、か。いい名前だ」
素直に褒められると照れくさいな…へへ、と笑って彼の横顔に目をやる。
アカバ。そう彼は名乗った。
「ここらも人が通らなくなったな…寂しいものだ」
「そうだねぇ。あんまり森に入る人はいないもんね」