はらり、ひとひら。


「本当にいい天気だね、師匠」


こんなにいい天気の日はどこかお出かけしよう。家に籠ってるのももったいない。


カーテンを開けお日様を浴びつつ身支度をする。その横で師匠はちっとも興味がなさそうに鼻を鳴らした。



「晴れも雨も大して変わらんだろうに」

「大違いだよ!」


一喝して、空をゆっくり眺めた。青い空に、白い雲がほうきで掃かれたみたい。


遠出でもしようかと思ったけれど、アカバの「今が見ごろ」という言葉に今日も紅葉を見に行くことにした。綺麗な空だから、紅葉もとても綺麗だろう。



「あ…」


森への道を歩いていると、初老の女性がビニール袋を持って歩いていた。何やら重そうだ。足元がおぼつかない。



どこまで行くんだろう。荷物、重そうだなぁ。


手伝おうか、でもかえって迷惑じゃないか。どうしよう、と思っていると彼女は荷物
を取り落してしまった。袋の中身がばらっと散らばる。慌てて私は傍へ駆け寄った。








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