はらり、ひとひら。


紅い椅子に腰かけた。アカバは、目を閉じてじっとしていた。


「何も変わっていない。驚くくらい今も昔も…綺麗だ」


注意しなければ聞き取れないほど小さな小さな囁き。


私も同じようにして、瞼を閉じると鮮やかな二人の思い出が直接映像で流れてくる気がして堪らなくなった。




「お待たせ致しました」


茜さんの声で、意識が戻される。黒い盆に湯気の立った湯呑が3つ。



「いただきます」


優しく甘い味だ。ほっとする。じんわりと心が満たされていく。


「…今日は茜さんに、逢わせたい人を連れて来たんです」


静かに告げると茜さんは辺りを見回した。


「その人はどこに…?」


「ここに」


アカバがすっと立ち上がり、茜さんに近づく。






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