はらり、ひとひら。
きれいで淡くて、尊いから。共に生きられたとしても、いつか訪れる別れに耐えられない。
別れが恐いのは人も妖も一緒なんだ─
「もう、いい。もう十分だ。君の顔を見れただけで十分私は嬉しい」
「杏子。力を貸してくれてありがとう。…茜によろしく伝えてくれ、『体に気を付けてくれ』と」
まってと言おうとして言葉が出ない。アカバの笑顔は無邪気で眩しすぎた。
「それと─名前を呼んでくれてありがとう、とも」
─脳裏に霞んだふたりの笑顔。紡いだ時間は積もり積もって、アカバの心を染め上げた。
若かりし茜さんもきっと同じように。