はらり、ひとひら。
刺すような視線。
踏み出した足も、一瞬で凍りつく。
慌てて辺りを見回すけれど、私を見ている人などいなかった。妖も然り。
「…?」
「どうした杏子」
「…ううん、なんでもない。早く行こ!」
気のせいか─
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「っはー、おいしかった」
膨れたおなかを撫でつつ布団に転がる。あー至福の時間…
やっぱり冬は鍋に限るなあ。今日は水炊きだったけど、次はキムチ鍋がいいな。あ。ちゃんこ風もいいかも、ああでもおでんも捨てがたい。
「食い意地のカタマリめ」
「い、いいでしょ!健康で」
師匠の嫌味をかわしつつ、明日提出の課題を思い出して鞄に手を伸ばす。
─あれ。おかしい。
「っ」
体が金縛りにあったみたいに、動かない。