はらり、ひとひら。


師匠のダメだしに妖はしょんぼりとうなだれた。


「どこかの場所を示しているのなら…そこへ行ってみたいのです。お願いです椎名様。どうか、この通り」


お礼はなんでも致します、涙声で言うものだから参ってしまう。


「わかった」


妖と人を繋げる架け橋になる、そう私はいつか思ったじゃないか。だからその子の想いを汲んでこの妖に届けるのも使命なはずだ。


「貴方、名前は?」

「琥珀、といいます」

「じゃあまずは細かい話はあとにして、この地図を貰ったいきさつを教えて」


琥珀は素直に「はい」と頷いた。ほどなくしてゆっくり話し始める。


「私は、森の北側に棲んでいました。何年も長いことずっと。─ある冬の日です。木の上から、不意に声をかけられたのです。今にも雪が降り出しそうな程、冷え込んだ真冬の日でした」


**************


【琥珀side】


ふと、空を仰ぐ。今にも、崩れてきそうな空だ。






< 632 / 1,020 >

この作品をシェア

pagetop