はらり、ひとひら。
師匠のダメだしに妖はしょんぼりとうなだれた。
「どこかの場所を示しているのなら…そこへ行ってみたいのです。お願いです椎名様。どうか、この通り」
お礼はなんでも致します、涙声で言うものだから参ってしまう。
「わかった」
妖と人を繋げる架け橋になる、そう私はいつか思ったじゃないか。だからその子の想いを汲んでこの妖に届けるのも使命なはずだ。
「貴方、名前は?」
「琥珀、といいます」
「じゃあまずは細かい話はあとにして、この地図を貰ったいきさつを教えて」
琥珀は素直に「はい」と頷いた。ほどなくしてゆっくり話し始める。
「私は、森の北側に棲んでいました。何年も長いことずっと。─ある冬の日です。木の上から、不意に声をかけられたのです。今にも雪が降り出しそうな程、冷え込んだ真冬の日でした」
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【琥珀side】
ふと、空を仰ぐ。今にも、崩れてきそうな空だ。