はらり、ひとひら。
大きなシャベルを倉庫から引っ張り出して森へ向かうと、やっぱりそこは何もない更地だった。
「椎名様?ここを掘って何を…」
「人はね、時々忘れたくない思いを地面に埋めるの」
ざく、と小気味いい音がしてシャベルが刺さった。幸い土は柔らかく、私でもなんとか掘れそうだ。
「地面に思いを?どういう意味ですか?」
「とても素敵なことだよ。時代を超えて、思いが未来に届くんだ。…もしかしてざくろさんは、それに懸けたのかもしれない」
私の勝手な憶測だけど、試してみる価値はあるかもしれないよ。と言うと、琥珀は戸惑いながらも頷いた。
シャベルの使い方を教えて、二人で地面を掘り進める。
「師匠も掘って!前足で、ほら!」
「なっ、犬じゃないんだぞ!?」
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「駄目か…」
あちこち掘り返してみたけれど、めぼしいものは見つからない。
1日中掘っていたから筋肉が悲鳴をあげている。とっぷり日が暮れてもう逢魔が時だ。よくない妖が出てくる時間帯。
いや…でも、まだ。シャベルを握る手に力を込めると、琥珀が私の腕を緩く掴んだ。