はらり、ひとひら。
こんなこと予想もしてなかったし。
「いい。この際ついでだ、修行と思え。札なしで即席の術を作りこの場を切り抜けろ」
…えぇ!?
「無理ならまあ、死ぬだろうな」
「え、ちょっと師匠も手伝ってくれるんだよね…!?」
「お前の本業はなんだ?巫女だろう」
妖は基本、敵。しいては巫女は妖を祓い、弱きみことを守ること。
「忘れたとは言わせんぞ」
「…わかってる」
そう。忘れかけていたけど、妖は本来人を嫌って弱みに付け込む。
優しい者の方が少ない。それが当然。
…即席の術ってなんだろう。言霊で吹っ飛ばせる量じゃなさそうだし、生憎陣もひとつも思い出せない。勉強不足がたたったな…。
「時間稼ぎくらいはしてやる」
「椎名様はここまでしてくださったのです。必ず無事に、帰りましょう」
気づけば師匠と琥珀の間に挟まれていた。二人は完全に戦闘態勢に入っており、今にも飛び掛からんとしている妖たちを見据える。