はらり、ひとひら。
「し、椎名様!?」
驚いたように琥珀が声を荒げる。よそ見をした隙に、妖の攻撃を喰らい衝撃で琥珀の懐から櫛が落ちる。
!あれだ。
「ごめん琥珀!ちょっと借りる!」
ざくろさん、力を貸してください。
腕の皮膚の内側の、柔らかいところ。思いきりスコップの尖ったところに宛てがえば血がたらりと流れて、間髪入れずに櫛を突き立てた。
そのまま引くと、思い通り。
「っ、ああぁ!」
痛みをこらえて歯を食いしばる。本番はここからだ。
「札がないなら、私が札に!」
掬った血を墨の代わりに。紙がないなら私が土台に。