はらり、ひとひら。


反対の腕を巻くって、私は腕に「急急如律令」と大きく書き込んだ。



「急いて急ぐは律令の如く!!」



閃光。轟音。血文字がいっとう濃く浮かび上がって、いつも札を使ときと同じ光景に息を呑む。これで、本当に大丈夫なのだろうか。


「っ─!」


眩しさに目が眩むけど忌々しげな声をあげる妖に、うまくいった、と確信を得る。


瞬きをした後に目を開けると妖は綺麗さっぱり、嘘のように消えていた。…いや、消えすぎている。妖どころか木々もなぎ倒されて、空き地の面積が拡大してしまった。



「ウソ!?や、やりすぎちゃった。どうしよう!!」


師匠に目で助けを訴えるとふいっと目を逸らされる。ちょっと!



「椎名様、お怪我を…」

「いやいや、初めての割に上出来だ。」


消しすぎだがな、と笑う声にうっと言葉が詰まる。まさかこんなに吹っ飛ばしちゃうとは…。


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