はらり、ひとひら。
「傷を見せてください。私の着物で良ければ、処置を」
「ありがとう、でも平気だよ。…ほら」
掌で押さえていた傷口を琥珀にそっと見せると、縦に大きく線が入っているものの血はすでに止まっていた。
琥珀は驚いて目を丸くしていたが、それ以上は何も言わなかった。
…あれだけ血が流れたというのに、私の回復力の高さには毎回自分でもびっくりしてしまう。やっぱり、修羅の血が関係しているのかな。
「良くも悪くも、修羅の血は妖を呼び寄せるからな。妖は自分たちと似て非なるものを好む卑しき存在。下賤な奴らなら、尚のこと」
「防衛機制のようなもんだろう。狙われやすいがその分、傷の治りも早い。プラマイゼロ、とかいうやつだ」
防衛機制…か。ミミズ腫れをそっとなぞると、やっぱり傷は綺麗に消えた。何もないつるりとしたいつもの自分の腕だ。
血文字で書きこんだ方の腕も何も外傷はなく、拍子抜け。
「でも何にせよ…みんなが無事で良かったよ」