はらり、ひとひら。


目を疑った。多分、この場にいる全員がそうだったんじゃないかと思う。


だって櫛から女(ひと)が生まれてくるなんて、どんなおとぎ話を読んでも今までなかった。


櫛の亀裂から飛び出した光は人影を孕んで、厳かに一人のひとが、地面にふわりと降り立つのを見つめていた。



「ま、待ってくれ。これは一体─」

「……やっと会えたね。琥珀」


膝から崩れ落ちる琥珀の肩に抱き着き微笑む、赤い着物の女性。瞳が印象的で、陽に当たると透ける髪色。

肩口で短く揃えられているけど、きっと昔はもっと伸ばして結っていた。


─そう、聞いていた。



「ざくろ…」

「うん。そう、私だよ。黙っていなくなっちゃってごめんね」


琥珀は茫然としている。状況を飲み込めないんだろう。私も同じだけど、黙って見守ることにした。


あとは、私が口を出す域じゃないと思うし。





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