はらり、ひとひら。
「ううん。よかった、本当に。二人がまた会えて私も嬉しい」
どれだけ願っただろう。離れた時間は長かったけど、人でなくなったざくろさんは長年の願いをきっと叶えられるだろう。
「信じられない。夢でも見てる気がしてならない、ざくろ、お前本当に妖に…」
「あ~もう、だからそうだってば。もう、いい加減信じてよ!人の匂い、しないでしょ?」
琥珀にざくろさんは頬を膨らませ怒って見せた。その様子が本当に幸せそうで、固まった心がほどけていく。
「…髪は、イザナミ様に捧げるために置いて来たの。やっぱり流石に無傷で帰ることは難しかったみたいで。片目も潰れて、もう殆ど見えないんだけど…でも大丈夫」
これからはとなりに、琥珀がいてくれるんだもの。
あぁ。
想いは時間を超えて─
「そうだな。ずっと一緒にいよう、ずっと共に季節を数えて行こう」
そのうちきっと、髪もまた伸びるから。
そうしたらまた、新しい櫛を買えばいい。二人の縁を結んで離さないような、赤いきれいな櫛を。
優しい陽だまりが、夫婦を祝福するようにただ静かに降り注ぐ。