はらり、ひとひら。


一瞬、頭によぎる光景。


夢のような、幻のような。




あぁでも、きっといつか、現実になるだろう。苦難を乗り越える力がある、この二人なら。


「本当に椎名様には感謝してもしきれません」

「何かあったら、いつでも来てくださいね!相談に乗りますからね!…たとえば、恋の悩みとか」


ひっそり耳打ちして悪戯に笑うざくろさんに、つられて笑う。



「ありがとう」


離れた時間を埋める様に、これから二人は寄り添って歩いていくんだろう。ゆっくり、未来を重ねていくんだろう。



きっとさっきよぎった映像は、幻じゃない。




願わくは。二人の愛の結晶が、ちいさな命が─彼女の身に宿らんことを。





森を出るまで手を振ってくれた夫婦の、ごく普通の幸せを、ひたすらに願った。




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