はらり、ひとひら。
「どうかしたの?杏子」
「あれ、鯉のぼりかな」
「ん?どれどれ」
私が指差した方向に一斉に顔を向ける二人。
「えー?どこ?なんもないよ」
「ウソ。あの山の方、小さいけどなんか動いてない?」
「山ぁー?」
そこで私はやっと気が付く。はっとして、口をつぐんだ。─妖か。
「あれ、いなくなっちゃった。なんか見間違いだったみたい!気にしないで」
「もー」
二人には、未だに話せないでいる。私が、妖が見えていることを。
「おはよう、三人とも。どうかしたの?」
ミルクティー色の、少し長めの髪。透き通った目の色がガラスみたいで、本当に精巧につくられた人形みたいな顔立ち。
心がかき乱される、彼。
「神崎君─」
「お、神崎!なあ、杏ちゃんてばマジ朝からおもしれえの、鯉のぼりいる~って天然かましちゃって」
「あっ。ちょ、言わなくていいのに!」
「…鯉のぼり?」