はらり、ひとひら。



私が「見間違いだったから気にしないで!」と言う前に、神崎君は優しく微笑んだ。


「何言ってるの、まだ4月だよ」


そう二人に言ったあと、私を一瞥した。その瞳が、「あれは妖だ」と言っている気がした。


**************


三年に進級するときはクラス替えもないし、気が楽だ。私たち4人は相変わらず仲良しで、最後の1年間…いや、卒業してもみんなとずっと付き合っていきたいな。


飛鳥と秀君は確実に距離が縮まって、もう完全に公認カップルのようになってる。そのたび飛鳥は否定してるけど、秀君だけはにやにや笑って飛鳥の反応を楽しんでるみたい。


…でも私はというと。なんの進展もないし、アタックする勇気もない。卒業したらもう、チャンスはゼロになっちゃうのに……いや、今もゼロに近いっちゃあそうなんだけど。


そりゃ…一緒に居たいし、となりに立って支えたいな、なんて乙女なこと考えないわけがない。好きな人だもん。


そのためにはまず、行動…だよね。


「よっし、頑張ろう!」


気合を入れ机の中身を鞄に詰め込み、教室のドアへ向かおうとした。



「何を頑張るの?」



「わーーっ!??」


背後から声をかけられて猫よろしく飛び上がった。声をかけた本人も驚いて目を丸くしている。─噂をすればなんとやら、だ。



「ごめん、驚かせちゃったかな」


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