はらり、ひとひら。
ゆっくりと退けてくれた神崎君に短くお礼を言い、妖の前に立つ。
透き通った桜色の瞳がわずかに細められる。
「お前が椎名杏子とかいう巫女か。ふん、生意気な」
「生意気で悪かったね。それで、何?」
今度は一体、なんの依頼だろう。人の私に頼むってことは多分、また人繋がりじゃないか─なんてのんきなこと考えてえながら、妖を見た。
…今更気付いた。この妖。
「…人魚?」
「…だったらどうした」
上半身は普通に着物を纏っているけれど、下半身は不思議な色の鱗で覆われていた。その体は地面から浮いていて、髪の毛もさらりと靡く。
「そんなことはいいのだ、とっとと行くぞ。急ぎだ」
「え、ちょっと!貴女、名前は?」
彼女は振り向いて、意志の強い目が私を見据えた。
「澪(みお)」