はらり、ひとひら。
「悪く思うなよ。元を辿ればお前が悪いのだ」
「っ、私は何もしてない!逆恨みはやめて」
「今更言い訳か?往生際が悪い。なに、心配するな。私が今からきっちりと、お前の大切なものを壊してやる」
…ばかだ。私は、本当に。
神崎君のいうとおりにしていればよかった。
音もなく広がっていく絶望に呑まれる。お願いだから、来ないで師匠。
「全部壊したあとに、戻してやろうな。お前は一生一人で、罪を背負って孤独に生きるのさ」
けたたましく笑う澪の声を遠くで聞きながら、策を練る。
どうすればいい。
どうしたら、師匠に気づいてもらえる?今の杏子は偽物だと。
この姿で呼びかけたところで無駄だろう。信用してもらえるわけがない。
澪にどこかでボロを出させなくちゃ。私じゃないと感づかせられない。
「あぁそうだ。可哀想なお前にひとついいことを教えてやろう。人魚は水を操れるんだ」
「っ、そんなのどうだっていいよ!早く戻してよ、お願い…!罠だよ、誰かにはめられたんだよ澪!!だって私、なんにもしてないっ」