はらり、ひとひら。
聞き慣れた声に顔を上げる。凛と、射抜くような青い瞳が私をねめつけていた。
「ちがっ、師匠!違うのこれは」
「はあ?」
「聞いて、ええと。私、これ、私じゃない!本当の私は私なの!」
必死に説明するが意味不明、と言った具合に師匠は鼻を鳴らす。うう、こうなるとはわかってはいたけど。
「くだらん。杏子、帰るぞ。無事だろうな?」
「うん、大丈夫。さっ、帰ろう」
「…!」
ショックだった。
「そんなっ…」
待って、違うのに。
駄目。このまま澪を行かせたら…遅かれ早かれ、何かアクションを起こす。よくないことを。
澪がどういうわけで私の不幸を望むのか知らないけど、関係ない人間が何人巻き込まれる?何人血を流すはめになる?
きっと澪は真っ先に─師匠を、消す。
「─っ」