はらり、ひとひら。
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【同日同刻 某所】
「またそれ?」
くだらない、という感情を殺しもせずに興味なさげに少年は呟く。
頬杖をついていかにも退屈そうにしている彼は、今日も今日とて、ここから出られない。相も変わらず不健康な顔色だった。
そう仕向けたのは、はて誰だったか。
「…それで?何が出来るの」
聞かれて短く、楽しいこと。と答えた。
「ふーん。じゃあそれ、俺にもやらせてよ」
それは駄目だと首を振るとあからさまに舌打ちをした。
「妖ねえ。外にはうやうやいるんだろ?気持ち悪い」
「そう。だから絶対に」
逃げたりしてはいけないよ。
「…わかってる」
籠の中の鳥の羽は折れたまま。
鼻を鳴らした彼は短く「水」と呟き、座敷牢の格子の部分からボトルを差し入れると無言で受け取り、かりそめの空を見上げた。