はらり、ひとひら。
「杏子、お弁当食べよ!」
「…うんっ」
寄って来た女に辟易しながらも、あくまで平静を装って包みを出した。
そうよ、これもあくまで計画のうち。母様のため。
うまくやりなさい、澪。
そうでなければ恥。新しい名を授けてくださった母様を裏切るわけにはいかないの。
言い聞かせて油断も隙も見せないよう、細心の注意を払って『学校』を過ごした。
「椎名さん」
好機は突然、訪れた。
やっと終わった、と鞄を手にして教室を出ようとしたとき。…神崎真澄。
名家の祓い屋の当主にして、この計画で早期に消すべき相手だ。丁度いい、そっちから来てくれるなんて。狐より先にこいつを潰すのも面白い。
「なに?神崎君」
「あのさ─」
笑顔を崩さないまま顔を覗いた。
「君は誰?」