はらり、ひとひら。
人里…学校は、妖がやすやす行っていいような場所じゃない。
だからまずは、師匠を澪から守ることにする。
絶対に澪の好きなようになんて、させるものか。
「私、いったん家に戻ります。そこに師匠…大事な式神がいるんです。お世話になりました!」
そう告げ、踵を返そうとした瞬間。
─聞きなれた優しい声がこだました。
「椎名さん!」
…うそ。
「か…」
どうして。
声が震えて、言葉にならない。
心の中でずっと助けを求めていたから、幻かとも一瞬思った。
だけど目の前にいるのは紛れもない彼。本物だ。
息を切らして、手には刀。透き通る瞳は私をしっかり見据えていた。
「かんざき……くん」
「うん。椎名さん。…だよね?」
堪え切れず視界が滲む。安堵感で腰が抜けそうだ。