はらり、ひとひら。
「う、うん。私、杏子だよ」
「…よかった。遅くなってごめん。もっと早くに気づけばこんなことには」
ごめん、と謝る神崎くんに首を振る。ちがう、神崎くんは悪くない。
悪いのは─澪だ。
「昨日ここで何があったか聞きたいけど、まずは俺の方から報告するよ。…人魚の妖は椎名さんになりすまして、学校へ来ていた。今朝から違和感があったから、怪しく思って放課後カマをかけて見たら正解だった」
なりすまし。…飛鳥や秀くん、クラスメイトは無事だろうか。
「今、澪はどこに?」
「傀儡…いや、人形の術を発動させた後、白狐のもとに行くと言っていた。だから多分、白狐が危ない。今すぐ戻ろう」
「!」
頷き、立ち上がる。
「…この人は?」
「あ。この人は淡島さん。神様なんだって」
「え。神様?…どうも」
神崎くんは驚いたようだったけど、ぺこりとお辞儀をした。
「なんだい、その信じがたいみたいな目は。不敬な子だね」