はらり、ひとひら。
「すみません。ご助力、ありがとうございました」
「ふん。アタシはなんもしてないって。わかったから、さっさと行った行った」
神崎くんに静かな声で謝られると、淡島さんは居心地悪そうにしてそっぽを向いた。
礼をもう一度言い踵を返そうとすると、呼び止められ立ち止まる。
「淡島さん?」
「神はひとりの人間に入れ込むことはできないけど、アタシはあんたが嫌いじゃない。…手出しな」
お守り、と渡され掌に乗る一本の針。淡島さんの花模様の針山から抜き取られた、まち針だ。
一見使い古した物のようだが、よく見ればキラキラ光っている。
「その針がアンタのこと気に入ったら、気まぐれに守ってくれるだろうさ」
「っ、ありがとうございます!」
「…しっかりね。自分の体は自分で取り返すんだ」
頷いて今度こそ、走り出した。