はらり、ひとひら。


命をそぎ落とす祓いの文言。半分言い終えたあたりで、澪は勝ち誇ったように嘲笑した。


目を疑う。


言葉を唱え終えないまま、澪はその場から跡形もなく消えたのだ。


「な…」

「消えた?」


どうして。身固めの術は確かに効いていたはずなのに。


「…恐らく飼い主に呼ばれたんだろう。呼び戻しの術か何かで」

「飼い主って」


そうか、澪の固執する『母様』という人だ。


「あれも哀れな妖だな。完全に狂っている、主にあれだけ入れ込んでいる式神もそういない」

「…けれどきっと、肝心のその主様はあの妖のことを利用しているだけに過ぎないんだろうね」


師匠と神崎くんの言う通りだった。


もう少し、早く彼女を祓っていれば、と後悔の念が湧き上がるが後の祭りだ。

また相見えるときがくるのだろうか。

< 750 / 1,020 >

この作品をシェア

pagetop