はらり、ひとひら。
動かない、ほんとうのガラクタになった人形たちをぐるりと見渡すとそいつは満足したように薄ら笑みを浮かべた。
「…じゃあ、またね」
喪服を翻し歩き出す妖にどうしても、ひとつ確認したいことがあった。
「待て!! お前が、妖狩りのときのオレを操ってたのか?」
「……なあに、それ…? 知らないわ」
「とぼけるな、あの時オレの懐に入ってたのも人形だった。しかも形のよく似た日本人形」
妖は押し黙る。ここで黙るなんて、ほとんど「そうです」って認めているってことだろうに。少女はやがて顔を上げるとまた、ゆっくり目を細めて嫌に笑うのであった。
「─もしそうだったとしても、」
─ちりん。
鈴の音を残して今度こそ、妖は消えた。
校舎内に響くチャイムと部活生、居残りの生徒たちの元気な声が遠く聞こえる。誰も傷ついていない、犠牲となった人はいない。
それなのに、心はひどく抉られて情けなかった。
『あなたには、どうすることもできないでしょう?』