はらり、ひとひら。


「あーっお前だ!お前!!」

「は?えっ何が」


何喰わぬ顔でこちらへ歩いて来たのは海斗だった。海斗は私を見ると「うげ」と声を漏らした。うげ、ってなんだうげって!!


「海斗面識あったの!?」

「面識も何も、おれがここ最近塾って言って通ってたのこの神社だよ」


なにそれ一言も聞いてない。どういうことだ…? このお兄さんに勉強教えてもらってるってこと?

唖然とした私に気を使ったのか、ふわふわ少女はあたふた。


「なんだかすごい偶然ですね。びっくり…あ。それより自己紹介がまだでした! 私、この神社の跡取り娘の宝生月子です。この金髪は兄です」


「千鶴って言います、どうもー。一応海坊の勉強みさせてもらってまーす」


やっぱり。この人が塾の先生だ。

ほうしょうさん、珍しい苗字だ。なかなかこの辺りじゃ聞かない。月子さんはぺこりと頭を下げ、千鶴さんはヒラヒラ手を振って笑った。…やっぱり似てない。




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