はらり、ひとひら。
海斗と面識があるってことは、もしかして。
「彼女?」
「ばっ、違うって!!」
訊いた途端光の速さで私を睨む弟ときょとんとする月子ちゃんは対照的だった。
「ははっ、海坊(うみぼう)には女は早いって」
「おれ別に彼女とかいらないし」
「そーそー、学生のうちは勉強しなさい勉強」
千鶴さんに頭をぐりぐり撫でられて海斗はぶすくれた。茶がかった柔らかい髪がもしゃりとしている。
月子ちゃんはあ、と思い出したように手を叩いた。
「あとちょっとで終わるからここ、掃除しちゃうね。海斗くん先に戻ってて」
「ん。じゃあ千鶴にこの問題聞いてから…」
「あ? 呼・び・捨・て・すんな」
「イテッ」
ばかだなあ海斗も…でこぴんされた額を押さえて海斗は千鶴さんに喰ってかかる。片手でそれを制しながら千鶴さんは笑いながら口元をひきつらせている。
「なにすんだよーーっ」
「ちょっとちょっとおねーさん? あなたんトコの弟生意気すぎません?」
「いやあすみません不躾な弟で…何卒何卒」