はらり、ひとひら。
ぺこぺこ頭を下げてみる。反抗期っていうかなんか今、気難しい時期だしなぁ。
「ちょっと! 姉ちゃんも乗るなよ! ちょっと千鶴まじで! 放せってばっ」
「まーだ言うかコイツ。お前なあ年上様には様付けが基本って教えたろーが」
「教わってねぇよ!」
「もーっ。ちづ兄、大人げない!!」
千鶴さんに拘束されてジタジタする海斗が目を回し始めた頃、月子ちゃんの怒声でようやく海斗は解放された。ぜえはあ息を切らしているけど、まあ自業自得だし男の子はこう、アクティブに強く育ってほしいものだ。
千鶴さんも本気で怒ってないし手加減しまくってるだろう。マナーを教えるのも年上の役目か…
「なんだよ…同情に満ちた顔すんなよ…」
「うんうん、海斗。強くなりなさいね」
「うざいよ姉ちゃん」
完全に疲弊した弟の頭を撫でると居心地悪そうに唇を尖らせた。
…14になっても、呼び方は小学生のときのままの『姉ちゃん』か。なんだか嬉しいな。
しゃがみ込んだ千鶴さんは海斗の手から教科書を奪いとってふんふんと鼻歌交じりに訊く。
「どこがわかんねぇって?」
「…ここ。教えて」