はらり、ひとひら。
「これはー…あ? これ英語じゃねえかよ。英語は陸に聞いた方がわかるだろ」
…りく?
「あ、そう? じゃあ陸兄に聞く。じゃあ数学のここからここ、もう一回教えて欲しい」
「おう。んじゃ部屋戻っか。月子、ちゃんと箒やら何やら片づけとけよ」
「ちづ兄と違って出しっぱなしにしませんよーだ」
べっと舌を出した月子ちゃんも少々、反抗期のようだ。
じゃあ私も帰ろうか、と踵を返そうとした時、きょとん顔の千鶴さんに引き留められた。
「折角だしおねーさんもお茶飲んでけば?」
・ ・ ・
「お邪魔しまーす…」
他人様の家ってどうしてこう緊張するんだろう。綺麗に整頓されたお座敷からは幽かにお香の匂いがしていた。