はらり、ひとひら。
ありがとうでもごめんね自分でもちょっとよくわからないんだよね、と早口で捲し立てていったん距離を図った。いかん、この子強い。今まで出会ったことのない人種だ。飲まれる。
ひいと神崎くんにしがみつくと静かな声が伸びて、空気を揺らした。
「相変わらずだね、月子。…椎名さん困ってる、抑えて」
「…っ、あ、私……も、申し訳ありません! つい興奮…いえ嬉しくなってしまいました」
興奮って言ったな今?
月子ちゃんは姿勢を正して恥ずかしげに私から目を逸らした。
「私の家は少し特殊ですから…同年代でこの職に理解のある人や同じ道に身を置く人を見るとつい我を忘れてしまうんです」
ご無礼をお許しください、何度も頭を下げる彼女にびっくりしてしまう。
「待ってそんな、謝らないで」
「ですが…」
「月子ちゃんの気持ち、私もちょっとわかるなぁ。私はたぶん、月子ちゃんの思うような巫女ではないけど、似た系統に身を置いているのは確かだよ。だから神崎くんとも仲良くしてもらってるわけだし…」
これくらいの年ごろなら、周りの人たちに理解を得られなくても無理はない。
神社という特別な家柄。一般家庭とは少し違う、一目置かれる存在。
学友が、小ばかにしてくるような人たちでなくとも、見えない線を張られているような─明らかに一線引かれているような感覚も敏感に感じ取ってしまう年齢だろう。