はらり、ひとひら。
「やっぱり姉ちゃん、ばかなのかな」
「どうして? いいお姉さんじゃない。羨ましい」
「うわっお前までそういう…」
・ ・ ・
大変なことになった。軽薄な考えだった数分前の自分を殴りたい。
─迷った。
「うっそでしょ…!?」
広すぎてわけがわからない。どうなってるんだ、このお家。陸さんを探し求めてあっちこっち行ってるうちに迷ってしまった。
つくりで言うと、神崎くんの家と似たようなつくりだ。だけど何故だかずっと、彼の家より複雑で迷いやすい。忍者屋敷かここは。
家の中で迷うってどういうことだ。ごめんなさいもう人様のお家うろついたりしません。元の部屋に戻してください…!
「…ん?」
半泣きでとぼとぼ長い廊下を歩いていると、一部入り組んだ場所に部屋があった。こんなわかりづらいところにも部屋が、と感心していると、なぜだかその一部屋だけ、襖や引き戸でなく普通のドアなことに気が付く。公家屋敷のようなこの家には、なんだか似つかわしくない。
少しだけ開いたドアの隙間。覗くと、薄暗いけど中が少し見える。本棚にはたくさんの本が所狭しとひしめき合い、簡素な机と椅子もある。
…なに。ここ。なんだか異質な─
「書斎…?」
それはまるで、誰かに呼ばれているような感覚。