はらり、ひとひら。


「やっぱり姉ちゃん、ばかなのかな」

「どうして? いいお姉さんじゃない。羨ましい」

「うわっお前までそういう…」


・ ・ ・


大変なことになった。軽薄な考えだった数分前の自分を殴りたい。

─迷った。

「うっそでしょ…!?」

広すぎてわけがわからない。どうなってるんだ、このお家。陸さんを探し求めてあっちこっち行ってるうちに迷ってしまった。

つくりで言うと、神崎くんの家と似たようなつくりだ。だけど何故だかずっと、彼の家より複雑で迷いやすい。忍者屋敷かここは。


家の中で迷うってどういうことだ。ごめんなさいもう人様のお家うろついたりしません。元の部屋に戻してください…!


「…ん?」

半泣きでとぼとぼ長い廊下を歩いていると、一部入り組んだ場所に部屋があった。こんなわかりづらいところにも部屋が、と感心していると、なぜだかその一部屋だけ、襖や引き戸でなく普通のドアなことに気が付く。公家屋敷のようなこの家には、なんだか似つかわしくない。


少しだけ開いたドアの隙間。覗くと、薄暗いけど中が少し見える。本棚にはたくさんの本が所狭しとひしめき合い、簡素な机と椅子もある。

…なに。ここ。なんだか異質な─


「書斎…?」

それはまるで、誰かに呼ばれているような感覚。
< 782 / 1,020 >

この作品をシェア

pagetop