はらり、ひとひら。
確かに、と声をあげて千鶴兄さんは笑った。
「素焼きの壺だろ。待ってろ多分この辺に纏めて…」
「割らないように気を付けて」
「うるせー子ども扱いすんな」
「…」
どっちが年上だか。
…それにしても、と、道具を漁りながら千鶴兄さんが口を開いた。
「話に聞いてはいたけどさすがに驚いたよなぁ。なんだあの娘。霊気の塊じゃねえか」
「うん。驚いたでしょ」
ああと彼は頷く。どこか楽しげだ。ニヒルに口元が笑ってる。
「月子も一目見て何かを感じ取ったらしいぜ。ただならぬ何かを─って」
「…椎名さんは別に化け物でも妖でもないよ」
念押しするとわかってる、と返された。
「わかってるけど興奮するのも致し方ないだろ。にわかには信じがたいが、あの感じじゃ本物だな。人のもつ霊力とは比べ物にならねえ」
─彼女は一体、なんなのか。高校一年の春─出会ってすぐの時から抱いていた疑問がとけるのに、そう時間はかからなかった。
「それにどうもこの感じじゃ、あの娘、結界を破って書斎に近づいたらしい」
「…! 書斎に…!? あの近くには仕掛けがっ」
「まー落ち着け。陸が食い止めただろうよ。家ん中の仕掛けは全部陸が管理してる。あいつがむやみやたらと書斎に人を近づける筈がねえ」
なら、いいんだけど。俺の狼狽ぶりに千鶴兄さんはくくっと笑った。…馬鹿にされてる。