はらり、ひとひら。
内心腹立たしく思うが口にはしなかった。「入れ込んでるな」と言われて否定もしない。
「大事なお姫さんだもんな」
「千鶴うるさい」
「あ? 呼び捨てすんな…お。あったあった素焼き」
手渡されて確認する。うん、間違いなく素焼きの壺だ。大きさも丁度いいし上等品に間違いない。
「ありがとう。支払いは遅くても明後日までにしておくから。確認できたらメールで良いから一報くれる?」
「へいへい。神崎の坊ちゃんは相変わらずしっかりしてるな」
「宝生家は神崎家の分家と言えど、商売は商売でしょ…っ!?」
いきなりぐりぐり頭を撫でられて固まる。何、と告げても千鶴兄さんは楽しげに笑うだけ。
一人っ子の俺からしたら、千鶴兄さんは本当の兄みたいで凄く嬉しい。…でも。この子ども扱いにはほとほと呆れる。
「やめて」
「やーなこった」
「ちょ、ほんとやめてってば」
何だっていうんだ。
やめてと言うほどにぐりぐり撫でる力は強まる。頭皮マッサージか何かか。
「…っとに、やめろってちづ兄っ」
ぽろっと出た言葉を待ってましたと言わんばかりに、目の前で笑顔がはじけた。