はらり、ひとひら。
「…飛鳥、真剣だね?」
「ん? あーあいつああ見えて滅茶苦茶親思いだからさあ。妹もまだ小さいし、手がかかるみたいで。忙しそうにしてる母ちゃんをちょっとでも喜ばせたいって必死なんだよ」
くしゃりと秀くんが笑った。なんだか自分のことのように嬉しそうだ。
飛鳥ってばすっかりお母さん思いのいいお姉ちゃんだ。
「いいプレゼント、見つかるといいね」
真剣に雑誌と向き合う飛鳥にその声は届いていたか定かではないけれど。
「おっ、帰って来たな。お前は母ちゃんになんかあげんの? 母の日」
「え?」
自販機にお茶を買いに行っていた神崎くんが席に戻って来た。秀くんの問いに、珍しく彼は首を捻った。
「母の日? 今週末そうなんだ」
「って忘れんなよ! 母ちゃん泣くぞ」
…そういえば、神崎くんの家族について私、何も知らないや。
「あげるも何も…俺今までそういうのあげたことないよ」
えっ。
「はあ!? 一度も?」
「うん」
「うわぁ親不孝だわこの子ー親泣かせだわ」