はらり、ひとひら。
「いってーなぁ…あれ? これ」
海斗はぶつぶつ文句を言いながらも、ページをめくりつづけた。誰? というように指差された先にいた父がこっちを見て笑いかけていた。
「あ…お父さんだよ。けっこうカッコいいでしょ」
「へーこの人が。姉ちゃん似てるね」
「え、嘘」
「嘘。あんま似てない」
…なに今のあんまり意味ない嘘は。
今頃の子はわからないなあと息を吐いた。いや、言っても年4つしか変わらないけど。
「おれが生まれた年に亡くなったんだっけ」
「うん。覚えてる…わけないか」
「当たり前じゃん」
0歳児に何言うのと、海斗は笑った。
「でもそっか…ふうん、父さん、優しそうな人でよかった」
海斗の黒目がちの瞳がわずかに細まる。こうしてみると海斗の方がずっとお父さんに似てるじゃないか。
家族4人で映った写真はほんのわずかだ。一人増えたのもつかの間、お父さんは死んでしまった。
また私たち家族は3人になった。