はらり、ひとひら。
ふと手を見ると私の腕にはフリーパス代わりのブレスレットが巻かれていた。
「いつ買ったんだろ?」
服は制服のままだけど、お財布も中身それほど持ってない筈なのになあ。
「まあいいか」
不思議に思いつつも、私はほんのちょっとだけ遊園地を見て回ることにした。
アトラクションは私の記憶の中とほとんど同じものだ。雰囲気もあの時のまま変わっていない。
私が元々住んでいた市はそこそこ大きな市だった。市民の要望かはわからないが出来た待望の遊園地。小さくても、家族連れに大人気でかなり経済的に豊かだったとは思う。
でも少し後に、一回り大きい遊園地がそう遠くないところにできて─しだいに客足は遠のいて、経営が困難になったのか私が小学校を卒業するくらいの時に閉園したんだ。
寂しいものだな…と息をついた。
「折角だし、何か乗ろうかな…」
いい年した女子高生が一人遊園地を回るという切ない絵面にはなってしまうが、まあいいだろう。
きっと幸せな夢なんだ。夢なら楽しまなくちゃ。
何から乗ろう、と少しわくわくしてパンフレットを眺めていると肩をぽんっと叩かれた。
「杏子、駄目じゃないか一人で歩いて行っちゃ!」
─絶句した。開いた口が塞がらないってこういうことを言うんだろうな、って。
「お父さん…」