はらり、ひとひら。


はっとする。


この妖から聞こえる怨嗟にも似た叫び。


─嫉妬、羨望、執着。


「お前はあの時の…家に現れた妖だ。ずっと行方が気になっていた」

神崎くんが呟く。

「あんな小さかったお前がこんなに育つなんて。父を食って人の味を占めたのか? 一体何人食った?」

『足りナい、まだ…ココロ埋マらない!!』


…父? どういうこと、と口走りそうになってこらえた。


陣の中足掻く妖の体の無数の目からは白い光が流れ落ちる。


そうか、この妖は、求めすぎてしまったのか─



「心を渇望しなければこんなに暴走することもなかった筈だ」

『ア…イヤだ、やめロ!!』

「何も知らず、お前は影で生きていればよかったのに」

妖がはっとする。その時にはもう、すでに何もかもが遅い。

つんざく様な、人を呪う言葉はかき消される。


「せめて、安らかに」


光に飲み込まれていく妖に私の声は届いたか定かじゃないが、私は手を合わさずにはいられなかった。





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