はらり、ひとひら。
夢の世界に入るには神の手が必要って言ってたけど、かなり危険で神への冒涜になりかねないって神崎くんは怒ってたけど。
蛟が協力してくれたんだ…意外。
「って、待って。演技ってどういうこと?」
「あの妖を手っ取り早く呼ぶには、力のある者の心の乱れが必要だったのだ。そこの小僧と結託して杏子の心を利用させてもらったぞ」
なんてことするんですか!
確かにあの時、この状況で喧嘩になったらーって滅茶苦茶焦ったけど。グルだったのかい。
「杏子も祓い屋の察しの良さを少しは見習ったらどうだ」
「うっ…し、精進します…」
ダメダメさを自覚して少し凹んだけど、伸びしろがあるってことで…
見送る三人に手を振って、師匠は人の形からいつもの大きな狐の姿へ変化して空へと駆けて行った。
すっかり夜になった田舎の町はしんと静まり返っていて、夜の少し冷たい風が頬を撫でる。
ちょっとした好奇心から、訊いてみる。
「私がいなくなって、師匠びっくりした?」
「するものか。第一体はその場にあったのだぞ。ずぼらなお前のことだ、昼寝しているものだと疑わなかったぞ」
さすがに私も制服も着替えず寝るなんてしないし、…あれ、してたわ。
「うーひどい」
「…海斗と母親はひどく心配していた。早く帰って顔を見せてやれ」
「うん」
ふわふわの白毛に顔を埋める。柔らかい布団みたいで、安心する。