はらり、ひとひら。
─暑い、暑すぎる。
燦々と降り注ぐ太陽を少し恨めしく思いながら空を見た。
半袖の夏服一枚でもびっくりするくらい汗が出て、今年の夏は猛暑になりそうだと少し憂鬱になる。
すっかり夏色に染まったこの町は、さすが田舎と言ったところか、いたるところから蝉の声が聞こえてくる。逃げ場なしの大合唱は暑さに拍車をかけているよう。
高校最後の夏休みを目前に控えた私達は、考えなければならないことで問題が山積みだった。
「う〜〜ん……」
気難しい顔をした秀くんが冊子を片手に唸る。
「志望校決まった?」
「いやあーまだ」
「だよねえ」
もう嫌だー!! と秀くんは進路の紙をほっぽりだして、机に突っ伏した。
えぐえぐと泣く仕草をするのものだから笑ってしまうけど、実際かなり深刻そうだ。
でも秀くんの気持ち、すごくわかるなあ。
「やりたいこととかわかんねぇよお…」
「ね、生きるのでいっぱいいっぱいだし」
「…おっぱいおっぱい?」
あ、元気そうだ。
秀くんを慰めていると飛鳥が教室に入ってきて、心なしかその顔には疲労が滲んでいる。
「あー…肩凝った」
「なんで肩凝り?」
「進路のことで、教頭のとこ行ってたのよ。あいつと話すと肩凝るのよねぇ」