はらり、ひとひら。
それはわかるかも、と笑った。
教頭先生の分厚い眼鏡の奥にある尖った目は、威圧感をこれでもかと醸してくる。
あの目で見られると寿命縮むもん。
「飛鳥それ、その紙なに?」
「これ? 過去問のコピー」
「へえー」
見せてもらうけど何もわからなくて絶望した。
飛鳥はかなり前から進学を希望していて、この町からずっと都会にある公立の大学を目指している。
さすがはいいところの過去問、何が書いているのかおつむの弱めな私にはさっぱりわからない。
「秀、あんた進路決まったの?」
「えーまだ」
「のんきなこと行ってるとあっという間に夏休みも終わるわよ」
「わーってるよー…もういっそ就職しよっかな」
それはそれで全然アリだ。だけどこの田舎の町、就職できる場所もそんなにない。探すのは大変そう。
隣の市とかならまだありそうだけどなあ。
ああ、と思い出したように飛鳥が呟く。
「そういえば廊下の張り出しみた?」
「何かあったの?」
「補習生。期末で平均点より下の教科が5個以上あると、補習対象だって」
「!???」
バッと秀くんと顔を見合わせる。何その制度! きいてないですけど!!?
「今年から三年は補習制度つけたらしいわよ」
いらん制度つけてくれおって…!
「それはつまり…夏休みに…?」
「登校するとかいう…オカルトじみたお話です……?」
そうでしょ、と飛鳥は頷いた。なんてこった。神は死んだのか。
嫌だあ〜!! 平均点より下絶対5個以上ある! もうむり! 進路のことも考えなきゃなのに、と項垂れて秀くんと涙を流した。