はらり、ひとひら。
秀くんは眉を下げて机を叩く。
「くっそー神崎はホント何してんだよ! 頭良いからって余裕のよっちゃんなのか?!」
「あたんないの」
「あはは…」
神崎くんは皆には体調不良と伝えたらしいけど、今朝早く私には別で連絡が来た。妖関係で、どうしても外せない、急な依頼が入ってきたらしい。
学生の傍ら、本業の人は本当に大変だなと素直に感心してしまう。体壊さないといいんだけど…
頑張り屋の彼だから、心配だ。
「……以上が、うちのクラスの補習対象者だ」
帰りのホームルーム。矢野先生がざっと読み上げた苗字の中にやっぱり椎名は入っていました。無念。
「でもま、うちのクラスこれでも少ない方だぞ。教科別に補習の日にちも違うから、対象者には明日プリント配布するからなー」
…少ないの? まあ確かに、10人くらいしか呼ばれなかったけども。
下校のチャイムが鳴ると一斉に皆が立ち上がり教室は騒がしくなる。
「はあ……」
明日は終業式だというのに、今年の夏休みはかなり忙しくなりそうだ。
…憂鬱だな。と─この時は本当に呑気に考えていた。
ただ漠然と山積みの課題や小難しい問に頭を悩ませるのが嫌だなと、ごく軽い気持ちで。
しかし実際私に待ち受けていたのは、補習なんか霞んで見えるくらい、恐ろしい試練の連続だったのである。
だがこの時の私はそれを知る由もなかった。