はらり、ひとひら。
・・・
side-真澄
連絡が入ってきたのは今朝早く。窓を叩いた鳥の姿の式神はどういう仕組みか人語を覚えているようで、器用につらつらと話した。
「今朝は悪かったね、まだ寝ていたろう」
「いえ。構いません」
目の前で少し申し訳なさそうにする妙齢の男性。年齢不詳だが今更尋ねるのも野暮というものだ。恐らく三十代の半ばはとっくに過ぎた頃か─
「…今日いらしたのはやはり、岩についてのお話ですか」
彼はお茶を啜って、長い沈黙の後頷いた。
「ああ。どうもよろしくない」
「よくない、というのは、その」
「…あぁ。そうだ」
察しろ、と目が訴えている。よほど言いづらいんだろう。…まあ無理もない。
俺だって言いづらいし、言ったら実際に起きてしまいかねない。言葉には魂が宿るせいだ。
「緋嘉さんは『先見書』をご存知でしたね」
緋嘉(ひが)─神崎の分家にあたる、生前父と交流の深かった彼。
誰より父の死を惜しんでいた人。
目の前の彼の名だ。
緋嘉さんは頷いて、それが何か…? と声を落とした。
「あれは本物の予言なんです」
はっきり呟くと明らかに狼狽したように、緋嘉さんは目を泳がせた。
声が震えている。
「だがあれは…あくまで占いや術で見えた、なんというかオカルトじみたものだと先代は信じていなかったろう」